――第七階層は、天國ではなかった。 文字は死体だと、彼の写真集のあとがきに書いてあった。 『――文字は死体です。だから、僕はこうしてあとがきという名の死体を作るのです。そして、作品のなかで様々な少女や少年、青年を殺しては刹那の生肉のあたたかさ、血液の鮮やかさ、生命に流れる残酷な時間のゆるやかさに触れ、その度に絶望にうちひしがれます。いつか僕は、僕を、殺すでしょう。』それが、第二写真集『プラスト』発行の際、本に巻かれた黒い帯に銀箔で書かれた文章の一部だ。 「いつか僕は、僕を、殺すでしょう」という部分が大好きで、私はなにかあるごとに音読していた。きっと誰よりも、そのマットな質感の黒い帯をみつめていたに違いないと自負している。この頃の彼の初期作品は迷いがよく出ていて好きだ。浴槽のなかで、深く手首を切って死んでいる自殺写真が見開きで載っている。その一枚のために、この写真集は防水加工を施されていた。どうぞ浴槽に浸かり、死体と同じ格好でお読み下さい、という趣向が凝らしてあるわけだ。 --------------------- 自殺体写真を専門に撮っている写真家と、その存在に翻弄され魅了される人々の話です。淡々とした中篇小説です。自殺体写真家を軸に話が進みますが、特に怖い話ではありません。
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187 ワンエイトセブン / 蟻塚
http://arizucca.vivian.jp――第七階層は、天國ではなかった。
文字は死体だと、彼の写真集のあとがきに書いてあった。
『――文字は死体です。だから、僕はこうしてあとがきという名の死体を作るのです。そして、作品のなかで様々な少女や少年、青年を殺しては刹那の生肉のあたたかさ、血液の鮮やかさ、生命に流れる残酷な時間のゆるやかさに触れ、その度に絶望にうちひしがれます。いつか僕は、僕を、殺すでしょう。』それが、第二写真集『プラスト』発行の際、本に巻かれた黒い帯に銀箔で書かれた文章の一部だ。
「いつか僕は、僕を、殺すでしょう」という部分が大好きで、私はなにかあるごとに音読していた。きっと誰よりも、そのマットな質感の黒い帯をみつめていたに違いないと自負している。この頃の彼の初期作品は迷いがよく出ていて好きだ。浴槽のなかで、深く手首を切って死んでいる自殺写真が見開きで載っている。その一枚のために、この写真集は防水加工を施されていた。どうぞ浴槽に浸かり、死体と同じ格好でお読み下さい、という趣向が凝らしてあるわけだ。
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自殺体写真を専門に撮っている写真家と、その存在に翻弄され魅了される人々の話です。淡々とした中篇小説です。自殺体写真家を軸に話が進みますが、特に怖い話ではありません。
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