EVERYWHERE / ローストビーフ.jpg

「関係が深まるごとに、何かが冷えていくんだ。自分だけ振り付けを知らないダンスを踊らされている時の気分だよ」
「……つまり、キム。あんたは、愛のない世界に生きてるってことか？」

酔いと絶望の果てにすべてを失った刑事、ハリアー。
人生のどん底から足掻きながら〝愛の所在〟を問い直し、周囲を巻き込んでいく。
共に捜査にあたるキム・キツラギ警部補もまた、彼との距離に揺れながらも他者との繋がりを模索する。

舞台は、変革の予兆ざわめくレヴァショール。
哀しき衛星警官ジャン・ヴィクマールは、自分の過去と向き合いながら、〈連合〉の暗部に迫っていく。
「──ああ、そうだ。許す。許してやる。だからあの大馬鹿くそ野郎に、無邪気に生きる力を与えやがれ！」
怒りの仮面を破り捨て、過去を受け入れたとき、彼は再び前を向く。

この物語は、不完全な人間同士が、壊れながらもなお他者を愛そうとする力強さを肯定する。
壊れた街、壊れた人々。
傷を抱えながらも再生を目指す彼らの姿は滑稽で、しかし切実だ。
個人と街の再生は重なり、やがて大きなうねりとなっていく。


──街はまだ、痛みを覚えている。血を流し、かさぶたで覆いつくし、また剥ぎ取られ、まだ痛みを覚えている。けれど確かに脈打ち、呼吸をしている。

── さあリズムをとれ！　おまえならいけるさ、ニューボーン・クリーチャー！