音系同人インタビュー/Armytom さん、sweez さん

[2010/07/30 : Interviewer - AnitaSun]

皆さんは、BMS をご存知ですか?
BMS とは「コナミの大ヒット音楽ゲーム beatmania を、誰もが自分の作った曲でプレイできるように」と開発された、
同人音楽ゲーム BM98 の曲データファイルのことです。

Wave の Morigan 氏、Alstroemeria Records の Masayoshi Minoshima 氏や
Cool & Create のビートまりお氏を始め、現在注目されている音系同人作家には、BMS 作家 / 元 BMS 作家が多く存在します。

今回の音系同人インタビューでは、そんな多くの音系同人作家を輩出した BMS 界から、
現在進行中の史上最大級の BMS 系イベント "plugout4" *1 の主催者・且つ BMS 界の最重要作家 Armytom さんと、
同じく plugout4 最大の目玉曲の一つ "Le Petit Prince (from Adansonia)" の制作者 sweez さんをご紹介します!

Vanishing Point from Bonsajo on Vimeo.

楽曲紹介: Le Petit Prince (from Adansonia)

音楽 sweez + cubesato / 映像 細金卓矢

この大変かわいらしく、少々悲しげなフォークトロニカは、2010年春の大ヒットアニメ「四畳半神話大系」の ED 映像の作者である細金卓矢氏がアニメーションを作成したことで物議を醸し出した BMS で、plugout4 最大の目玉曲の一つです。

サン=テグジュペリの名作文学「星の王子さま」から着想を得て作られたのだとか。

sweez さんのウェブサイトや、white-screen.jp に製作のインタビューが公開されています。


音楽を始めたきっかけは?

―― さて、早速ですが、まずお二人が音楽を始めたきっかけを教えてください。
Armytom 音楽ツクール for windows3.1 を購入したのがきっかけでした。
同時期に発売した RPG ツクール dante98 の BGM を制作するために楽曲制作を始めたってわけです。
ソフトシンセというか、midi みたいな感じだったなぁ…
うろ覚えなので間違っているかも。
始めたのは 13 歳。
作っていたジャンルは…今から思えば、アンビエントテクノ的な音楽。
何かを聴いていたわけではないけど。
―― それはかなり早い! 一方で BMS 始めたのっていつ頃?
Armytom BMSを 始めたのは、BM98 が出た直後あたり。
1998 年なので 20 歳。
―― じゃあ 7 年間 DTM やってからの BMS だったんだ。
Armytom 実際は、高校時代は格ゲーばっかりやってたので、その期間のキャリアは薄いけど(笑)
あの頃はしょうがない…
―― あの頃熱かった!
―― sweez さんにも聞いてみます。音楽を始めたきっかけは何でしたか?
sweez 明確なきっかけはないのですが、 もともと音楽好きだったのが、ゲーム音楽やビートマニアに出会ったことで、 音楽を作るようになった感じです。
BMS を始めたのは、2007 年の初頭からです。
"第六回無名戦"というイベントに出した Colorful という BMS がデビュー作ですね。
―― それまでは、どんな場所で音楽をやっていたんですか?
sweez Meine Meinung というバンドです。
そのバンドの楽曲を BMS で出そう!というコンセプトで、sweez を作ったんです。
(C)olorful
(映像は、去年トールミツハシさんが作ってくれたものです)
―― 1作目でこのクオリティは凄いですね! いいなあ、映像もかわいい…
sweez ありがとうございます♪

作曲環境

―― 軍ちゃん(Armytom氏の愛称)の作曲環境って、どういう変遷だった?
Armytom 音楽ツクール for Windows 3.1 →
音楽ツクール95 + Sound Canvas 95 →
音楽ツクール95 + SC88PRO →
BMSCreator + SC-88pro + サンプリングCD →
BMSEditor + microKORG →
BMSEditor + FLUITY LOOPS。*2
FLUITY LOOPS は音ネタ作るだけで、楽曲を作るの自体はBMSE。
sweez SC-88pro*3
―― やっぱりこの頃はみんな SC-88pro だった!
FLUITY LOOPS*4 でどうやって音作ってるの?
加工する元になる音色が必要だと思うんだけど。
Armytom プリセット*5(笑)
―― すげえ、やっぱすげえ(笑)
Armytom プリセットのつまみを適当にいじっているうちになんとかなっていく。
sweez 感性のままに。
Armytom そういう意味では microKORG*6 は本当にフィット感が良かった。
もう手放しちゃったけど、今度またDXを買おうと思って…
―― microKORG はホント軍ちゃん向きって感じがする。
最近音を作る、みたいな習性なくなったからマズイなあ。
こういう話を聞くと、最近随分ひ弱になったと思う。
SC-88pro の頃って、どうやって音作ってた?
Armytom SC-88pro は、なんというか…イベント*7を組んで……
―― あ、録音後に弄ったりしてないんだ。
逆転再生はやたらやってた気がするけど。
Armytom だって、持ってたのがサウンドレコーダー*8だけだもん、
逆再生とピッチの上げ下げしか出来ない(大笑)
―― 俺も!仲間!俺なんて、未だにサウンドレコーダー使ってるよ!(大笑)
Armytom 俺も GOLDWAVE *9(大笑)
sweez 昔、RPGツクール2000でゲーム作ってるとき、
カーソルの移動音をサウンドレコーダーで録音しました(笑)
―― ありました、ありました、そういうの!
インターネットを血眼になって這いずり廻っては…
Armytom |> たたかう   ピッ*10
―― flash や shockwave を見つけるたびに、サウンドレコーダー起動してた。
「ピ」とか「ギョギョーン」とか、音を録音するんです。
sweez 探しました、探しました(笑)
―― 軍ちゃんはどこで音を探してた?
Armytom 声ネタは映画が多かったなぁ。
最近は著作権フリーのアカペラを使うようにしてる。
―― ああ、映画は宝庫だよね! 何しろ映画から取った臭い声ネタ集めたサイトとか、
海外のサイトに一杯あったから。
Armytom あったあった(笑)
sweez サンプリングネタはグレーでナンボですね。

楽曲紹介: Beaker

作曲・映像 FROL (Armytom 氏の別名義)

そんな彼の質素なはずの作曲環境から
生まれた BMS がこちら。
どうしたら捻り出せるのかさっぱり分からない、
サイケデリックな音のオンパレードです。
非常に彼らしい、他に類を見ない
独創的な音作りがカッコイイ。
全く読めない(というよりは読みようのない)曲展開と、
強烈な音の塊がキモチイイ!!


―― sweezさんの作曲環境はどんな変遷でした?
sweez もともとバンドサウンド・生演奏のみの環境だったんですが、
ちょうど BMS を始めた時期から DTM にも少し手を出すようになり、
いまは Digital Performer を収録用、Nuendo を打ち込み用に利用しています。
sweez 打ち込みの音源は主に Fantom*11 です。
―― 軍ちゃんとは打って変わってすごい本格的ですね。
Armytom ぜんぜんわからん(笑)
―― おれも! まず Digital Performe と Nuendo の違いがわからない(大笑)
sweez ええと、Mac 用と Windows 用の違いです(笑)
逆に、MIDI音源やキーボードの部分ではまったく追いつけないです。
パラメータをぐいんぐいん弄ったり、プラグインをかませて新しい音を作ったりとか、
そういった部分にはあまり精通していません。
結構ストレートに使ってます。
―― なるほど、そこは軍ちゃんの分野ですね…
Armytom いやー、でも VSTi*12 とか理解してないんで、これから勉強します。
―― あ、俺も。 ASIO*13 ってなに、みたいな。
sweez アトムの友達かと思ってた。
Armytom ASIMO を連想した。
―― 本田が作ったアトムだよね。
sweez そうだね、二足歩行だね。

補足解説

  • *1 plugout4
  • BMS 界でも特に名立たるメンバーを引提げ、60 曲を超えるオリジナル BMS を揃えた、BMS パッケージ製作イベント。
    もちろん、全曲無料で遊ぶことが可能。
  • *2 Armytom 氏の作曲環境
  • 一言で解説すると、恐ろしく質素な環境。
    DTM 暦が 10 年以上ある人物の環境としては、異様でさえあると言える。
  • *3 SC-88pro
  • 10 年ほど前に非常に流行した Roland 社のシンセサイザーで、低価格ながら大変高機能な名機。
  • *4 FLUITY LOOPS
  • 激安で手に入る統合音楽製作ツール。 値段の割りに非常に強力で、プロ・アマチュアを問わずの中でも非常に評価が高い。
  • *5 プリセット
  • デフォルトで入っている音のこと。シンセサイザーは「音を合成し、作る」楽器であると考えると、
    これは楽器に対する挑戦に等しい行為。
  • *6 microKORG
  • 「音を作る」事に特化した、KORG 社のシンセサイザー。 こちらも非常に低価格だが、使うほどに味わい深い名機。
  • *7 イベント
  • シンセサイザーで譜面を書いたり、音色を作るための制御コード。
    つまみを捻って音色を作るのではなく、プログラムのようなコードを記述して、音色を作るためのもの。
  • *8 サウンドレコーダー
  • Windows にあらかじめ入っている、録音用アプリケーション。
    余りにも機能が少ないため、本来 DTM 作家に使用される事は極めて稀である。
  • *9 GOLDWAVE
  • フリーのオーディオ編集アプリケーションで、サウンドレコーダーから比べると様々な機能を持つ。
  • *10 たたかう
  • Armytom 氏は Final Fantasy シリーズの狂信者。
  • *11 Digital Performer、Nuendo、Fantom
  • Digital Performer、Nuendo は、どちらも作曲に必要なツールを網羅した統合音楽製作ソフト。
    一方、Fantom は Roland 社の最高峰のシンセサイザー。 気になるお値段は、全て新品で計 60 万円以上(!)。
  • *12 VSTi
  • ソフトウェアシンセサイザーの規格。
    フリーのソフトウェアシンセサイザーの多くは、この規格に則って造られている。
  • *13 ASIO
  • PCからシンセサイザーへ発音命令を送った際の、タイムラグを極少にするために考案された規格。
    他にも色々といい事があるらしいが、筆者は良くわかっていない。